かく熱きにもあらず、冷やかにもあらず、唯(ただ)ぬるきがゆえに、われ汝(なんじ)をわが口より吐き出さん。
『ヨハネの黙示録』

 俺は拳銃を拾った――。

 大学生、西川トオル(村上虹郎)は、雨の夜の河原で、ひとりの男の死体と共に放置されていた拳銃=COLT社の「LAWMAN MK 357 MAGNUM CTG」を手にし、それを自宅アパートに持ち帰った。まもなく、その銃は彼にとって、かけがえのない宝物のような存在になった。見つめれば見つめるほどに、触れれば触れるほどに、愛しさがこみあげてくる。「美しき恋人」と一緒にいることで、トオルはかつて体験したことのない自信に満たされるようになった。誰かを脅すことも、誰かを守ることも、誰かを殺すことも、自ら死ぬことも可能にする銃という「道具=武器」は、大学生活の心的様相もあざやかに変えていく。

 悪友のケイスケに合コンに誘われたトオルは、欲求不満気味のケイスケとの「付き合い」から、その夜出逢った女と一夜のアヴァンチュールを楽しんだ。女の部屋でのセックスは、銃の存在によって高揚しているトオルにとって心地よいものだった。翌朝、彼女の部屋で目覚めると、女はトーストを焼いていた。カフェでバイトしているという女は、バイト先で分けてもらっているという豆で淹れたコーヒーとトーストで彼をもてなした。食べながらテレビを見ると、あの銃と関係する男の遺体が発見されたというニュースが目に飛び込んできた。途端に気分が悪くなったトオルはトイレで嘔吐する。優しく接する女を再び抱いた彼は、その日以来、彼女を「トースト女」と頭の中で呼ぶようになり、セックスフレンドとして、度々性欲を吐き出すようになった。

 アパートの隣の部屋からは、ときおり、子供の泣き声と、我が子を罵倒する母親の声が漏れてくる。それはトオルにとって、親との忌まわしい過去をよみがえらせる「忌まわしいサウンド」だった。それを聞きたくない彼は大音量の音楽でそれを打ち消そうとしていた。

 大学の学食で、以前も講義中に話しかけてきた美女ヨシカワユウコ(広瀬アリス)と再会したトオルは、やけにフレンドリーで、自分に興味がある素振りを見せる彼女と付き合うことを妄想した。すぐにセックスする対象ではなく、あえて時間をかけて親しくなることを計画した。それはきわめて魅惑的な「ゲーム」に思えた。銃があることによる余裕だろうか。あるいは、己を「普通」に留めておくための「安全装置」だろうか。意識的かもしれないし、無意識かもしれないが、いずれにせよ、彼はヨシカワユウコと「トースト女」を両極に配し、ふたりの女のあいだで、自分なりのバランスをとっていく。

 夜道で座り込み、自動販売機で買った缶コーヒーを飲んでいると、警官が通りかかった。さほど緊張することもなく、型通りのやりとりをこなすトオル。さらには、最近、犬を連れた警官を見かけるが、このあたりで麻薬でも見つかったのか、と問う。それは拾った銃をアパートに隠し持つトオルの「防衛本能」のあらわれでもあったが、同時にとても挑発的な行為だった。しかも、彼は冷静だった。警官に怪しまれることもなく、なんなく会話をクリアしたトオルは、その刺激に酔う。もし、こんなとき、銃を持ち歩いていたら、もっと気分がいいだろうと想像し、以後、それを実践するようになる。

 ヨシカワユウコとの距離を縮めていくトオル。ある夜、彼女に呼び出された彼は、頼られ、部屋にも誘われるが、あえてプラトニックに交際を申し込む。そうすることで、トオルの自信はさらに高まるのだった。そのとき、彼は銃を所持していた。そのことが、彼を冷静にさせたし、また同時に高揚もさせていたのだった。

 帰り道、その「愛しい恋人」=銃をポケットの中で握りしめていたトオルは、導かれるように夜の公園に侵入していく。そこにはいた、傷ついた黒猫が。その猫を「楽にしてやる」という大義名分を自分勝手に掴まえた彼は、生まれて初めて銃口を標的に向けた。

 一発。二発。発泡し、猫を殺したトオルは銃と一体化する自分を感じていた。

 しばらくして、トオルのアパートをひとりの刑事(リリー・フランキー)が訪れた。刑事は、トオルと銃のすべてを知っているようだった。部屋に入ろうとする刑事をなんとか防いだトオルだったが、喫茶店に移動して、尋問を受け、刑事からある言葉が発せられたとき、トオルは後戻りのできない「どこか」に、否応なく踏み出していくのだった――。

「次は人間を撃ちたいと思っているんでしょう?」

<キャスト>
西川トオル     村上虹郎
ヨシカワユウコ   広瀬アリス

トースト女     日南響子
隣の母       新垣里沙
ケイスケ      岡山天音
警官        後藤淳平(ジャルジャル)
ヤマネ       中村有志
トオルの実父    日向丈
トオルの実母    片山萌美
萩原啓一郎     寺十吾
駅前のウエイトレス サヘル・ローズ
テレビキャスター  山中秀樹

刑事        リリー・フランキー

<スタッフ>
企画・製作|奥山和由
監督|武正晴
原作|中村文則「銃」(河出書房新社)
脚本|武正晴・宍戸英紀
エグゼクティブプロデューサー|片岡秀介  
プロデューサー|木谷真規  
ラインプロデューサー|吉澤豪起  
音楽|海田庄吾
撮影|西村博光(J.S.C)  
照明|志村昭裕  
録音・音響効果|臼井勝
美術|新田隆之
装飾|龍田哲児
小道具|平野藍子
衣装|浜井貴子
ヘアメイク|永野あゆみ
編集|細野優理子
助監督|井手上拓哉
制作協力|米澤勉・シャンソン・八木順一朗
VFXスーパーバイザー|オダイッセイ
ガンエフェクト|大宮敏明
翻訳|地頭薗佑太
ポストプロダクション|OMNIBUS JAPAN
制作プロダクション|エクセリング
企画制作|チームオクヤマ
配給|KATSU-do・太秦
製作|KATSU-do
  
2018年/日本/カラー&モノクロ/DCP/5.1ch/97分/ R15+  

■公式サイト
http://thegunmovie.official-movie.com/

テアトル新宿ほか全国ロードショー

Ⓒ吉本興業

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