第31回東京国際映画祭コンペティション「半世界」


三重の田舎町で家業の炭焼きを続ける紘,車のディーラーである光彦。二人は幼馴染みだが,もう一人仲の良かった瑛介は自衛隊員になって田舎から出て行っている。
紘は結婚して息子がいるが,あまり上手くいっていないようだし,その息子はいじめられているようだ。が,紘はそれについてあまり関心がないらしい。
ある日,瑛介が自衛隊を辞めて地元に帰って来る。そのことについて,詳しくは話そうとはしないが,二人は瑛介のことを色々と世話を焼いてやる。そして,瑛介の帰郷をきっかけにして,色々なことに変化が起こってくる。

阪本監督はここ数作(「エルネスト」や「人類資金」)海外ものが多かったこともあり,日本の田舎町を舞台に一本何か撮りたかったとのこと。家業を続ける男を主人公にしたのは,監督自身の生家も商売をしており,後を継ぐ,継がないといったやり取りが日常であり,そんな内容を一度映画にしたいと考えていたからだという。監督自身の経験が色濃く本作に投影されているということだろう。

「半世界」というタイトルは日中戦争に従軍写真家として赴いた際に撮影された写真をまとめた連作「半世界」が監督の頭にあったようだ。しかし,その内容はその写真集とは全く無縁のオリジナルである。世の中には二つの世界がある。日々紛争が繰り広げられている大きな世界もあるが,それとは別に主人公たちが住んでいる小さな田舎の世界も一つの世界なのだ。小さな世界から大きな世界を語るようなことが映画ではできないか?そのあたりにこの映画の根っこがある。英語タイトルの “Another World” は日本語タイトルの「半世界」とはちょっと異なるような意味合いになっているかもしれないが,この映画の本質をよく言い表しているし,何よりインパクトがあるので,そういう英語タイトルにしたとのことである。

決して上手いとは言えないが,主演の稲垣吾郎は田舎町のどちらかと言えばダメ男をいい味を出して演じている。監督からは丁寧な演技指導があったらしく,いつもの自分とはちょっと違うものが映画では出せたのではないかと彼は言う。例えば,指差す動き。普段の稲垣吾郎であれば,優雅な動きで指を指すのだろうが,映画では敢えてぶっきらぼうの動きをしたのだそうだ。自分は友達が少ないのであるが,ビジネスの上では一緒に活動してきた仲間がいる。この映画で表現されている男三人の友情,絆というものは,そういう仲間との活動にも通じるのだと思うと彼は考えながら口にした。

本作は稲垣吾郎の代表作になるのは間違いないだろう。いい映画だと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください