ザ・レッスン/授業の代償 Урок

第27回東京国際映画祭コンペティション出品作品。

 ナデージャはブルガリアの英語教師だ。彼女のクラスで金銭の盗難事件が起こる。犯人に何度か名乗り出るように求めたが,結局誰も名乗り出ることはなかった。色々とやってみたのだが,犯人の目星もつかない。
 ナデージャは夫と娘の三人暮らしをしている。夫はろくでなしで,稼ぎもほとんどなく,生活は困窮している。キャンピングカーを売ろうとするが,ポンコツ故に動きもしないため,売ることもできない。そして,今日家が競売に出される知らせを受け取る。どうやら,夫にまかせておいた支払いがなされていなかったらしい。期限はもうすぐだ。どうにかして金を作らなければならない。
 ナデージャは副業として翻訳の仕事をしているが,その会社の支払いも滞っている。会社まで社長に会いに行ったが,来週払うの一点張り。彼女の父親は裕福なのだが,ナデージャの実の母親(どうやら,父親が顧みなかったせいで死んでしまったらしく,しかも,現在は若い妻をすぐにもらっている)に対する仕打ちに怒っていて,父親に無心することもしたくない。致し方ないので,街の高利貸しから借りてしのぐことにするしかない。
 期限の日,ようやく高利貸しから借金をして支払いをするために銀行へ行ったが,振込手数料分が足りずに振り込むことができない。銀行の営業時間はあと数分だ。これが振り込めなければ,家は競売にかけられてしまう。さぁ,どうする!?

 面白い!借金を返すために色々と苦心するナデージャ。ところが,偶然が重なって,結局期限の数分前を迎える。わずかな金が足りないがために,振り込みができない。さぁ,どうする!?たかが,こんな日常を描くだけで観る側に手に汗握らせるとは!構成の妙と素晴らしい脚本と確かな演出力が存分に発揮されている。
 後半,高利貸しへの借金返済が迫る。借金を返済しないのなら,親戚の子供の成績を操作しろと強要され,さらに高利貸しの要求はエスカレートする。どうしても金を作らなければならなくなった彼女の選択が,映画の冒頭の生徒による金の窃盗事件と結びついた時,観客はその皮肉に圧倒されてしまうだろう。
 こんな映画が,何の期待もなく,突然観られる喜び。これこそが国際映画祭の大きな魅力なのだ。

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