彼女のそばで Next to Her

第15回東京フィルメックス コンペティション参加作品。

 テルアビブの北にある街ハイファの裕福とはとてもいえない地域のアパートにシェリは妹のギャビーと二人で暮らしている。ギャビーは障碍者であり,知能が遅れている。だからシェリは毎日の多くの時間を妹の世話に費やしている。しかし,シェリも働かなければならない。その間,ギャビーをアパートに閉じ込めておくような生活には生活指導員から勧告が入り,シェリが働く昼間の時間はデイケアサービスの施設に預けることになった。そのせいもあってか,シェリは勤めている学校の代用教員であるゾハールと付き合い始め,彼女の家で同棲を始める。当然ながら,ギャビーもデイケアサービス以外の時間は一緒に過ごすことになるのだが,ゾハールのギャビーへの優しい対応もあって,三人の生活は上手くいくように見えた。ところが…。

 素晴らしい!
 シェリとギャビーの二人の姉妹を中心として,その周囲の人たちも含めた実に細やかな演出が観る者を引き付けて離さない。障碍者のギャビーを演じているのはイスラエルを代表する名優モーシェ・イヴギの娘であり,今では自身も人気女優となっているダナ・イヴギ。彼女の演技はとても健常者が障碍者を演じているとは思えない迫力あるものとなっている。そして,妹を見守るシェリを演じるのは監督の奥さんであり,脚本も担当したリロン・ベン・シュルシュ。妹を見守ると同時に,逆に彼女に大きく依存して生きている姉を繊細な演技で見事に演じ切っている。二人の姉妹の演技を見るだけでため息が出る。
 監督は本作が長篇デビューとなるアサフ・コルマン。彼はずっと編集畑を歩んでいたようだが,デビュー作とはとても思えない素晴らしい演出・構成には驚かされる。ラスト近く,大きな事件が起きるのだが,その事件によって,ラストで姉の妹に対する見方が大きく変化する。圧倒される結末に大きな感動が観る者を捉えるのだ。
 本作は母性の物語であると監督は言う。そして,次回作は父性の話になる予定だそうだ。当然,奥さんは俳優としてキャンスティングされるらしい。今後のコルマン監督には大いに期待したい。

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