第16回東京フィルメックス授賞式

11月21日から9日間にわたって開催された第16回東京フィルメックス。会期を1日残した11月28日、有楽町朝日ホールにて授賞式が行われ、各賞が発表された。

授賞に先立ち、会期中、6日間にわたって実施された映画人材育成プロジェクト「タレンツ・トーキョー2015」の報告が行われた。今年も、アジアから15名の映画の未来を担う人材が参加。「Me against the world」をテーマに、パク・キヨン監督をはじめとするメイン講師とのワークショップに加え、ピーター・チャン監督、ジャ・ジャンクー監督によるマスタークラスも行われた。「タレンツ・トーキョー・アワード」に選ばれた企画は、マレーシアのラウ・ケクフアットさんの『A love to Boluomi』。ラウさんは「この企画は私の家族の物語です。私の祖父は1948年に殺されました。マレーシアでは多くの家族が同じ経験をしていますが、この歴史は隠されています。この賞をいただけたことは、企画の実現に向けての大きな一歩です」と感謝を述べた。

各賞の発表は、市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターによる観客賞の発表から始まった。受賞したのはピーター・チャン監督の『最愛の子』。チャン監督は帰国していたため、配給会社ハピネットの鈴木俊輔さんが監督のコメントを代読した。「今日は私の誕生日でもあり、受賞をとても嬉しく思っています。この映画は特に思い入れのある作品です。観客賞の受賞は、映像作家になるという私の信念を再確認する良い機会となりました。なぜ今私が映画を作っているのか、思い出させてくれるこれより良い方法はありません」。なお、『最愛の子』は2016年1月16日より、シネスイッチ銀座ほか全国で公開される。

次に、学生審査員の山元環さん、菅原澪さん、十河和也さんが登壇し、学生審査員賞の発表が行われた。授与されたのはペマツェテン監督の『タルロ』。山元さんより、「恋歌は、纏っていたものを自ら剥ぎ取り、喧噪に唸るパンクロックへと変化した。本当に、彼が返るべき場所は〝自然〟だったのだろうか。最後、緑の中、私たちに背を向けるタルロに以前の面影は無い。圧倒的な、何かを得た、或いは失った彼をそこに見た」と授賞理由が読み上げられた。ペマツェテン監督は「日本の若い人たちがこの映画を評価してくださり、本当に嬉しく思います。先ほど受賞理由を読みました。とても細かく映画をご覧になっていただき、心から感謝しています」と語った。

続いて、イ・ヨンガン審査員長より、スペシャル・メンションの発表が行われた。授与されたのは、ヴィムクティ・ジャヤスンダラ監督の『白い光の闇』と、『クズとブスとゲス』の奥田庸介監督。『白い光の闇』の編集を務めたサマン・アルヴィディガラさんは「この作品は5年かけて作りました。受賞を非常に嬉しく思います」とコメント。次に、奥田監督が「スペシャル・メンションて何だろうと思って、さっ き学生審査員に〝メンション〟の意味を調べてもらったら、〝ちょっと触れる〟という意味でした」と切り出すと、会場から笑いが。奥田監督は「〝特別にちょっと触れる〟という賞をありがとうございました」という言葉で挨拶を締めた。

審査員特別賞は、塩田明彦審査員より、チャオ・リャン監督『べヒモス』と発表された。「押し寄せる現代社会の中で荒廃していく人間や自然を、批判的かつビジュアル化したこと」が評価された。チャオ監督は「明日、北京に帰ります。北京はすでに寒いですが、賞のおかげで温かい気持ちで帰れます」と語った。

最優秀作品賞は、シルヴィア・チャン審査員より、ペマツェテン監督『タルロ』と発表された。「IDを求める男がIDを失くすシンプルなコンセプトを美しく映画にしたこと」が授賞理由。ペマツェテン監督は、第12回東京フィルメックス(2011)でも『オールド・ドッグ』で最優秀作品賞を受賞している。「フィルメックスには強い縁を感じ、故郷のように思っています」と2回目の受賞を喜んだ。ペマツェテン監督は関係者への感謝を語り「ぜひこの映画が日本で公開され、もっと多くの方に見ていただけることを願っています」と、学生審査員賞とのダブル受賞に期待を込めた。

全ての賞の発表が終わったところで、イ・ヨンガン審査員長より総評が述べられた。「全ての作品が旺盛なチャレンジ精神に基づいて作られており、こちらも見ている間ずっと緊張していました。それぞれの監督が抱えている社会の問題を、鋭利な視点で捉えた作品ばかりでした。私だけではなく、審査員全員がこの10作品全てに賞を与えてもいいのではないかという思いで審査会議をしました。作品を通してアジアの未来を見ることができ、素晴らしい経験になりました」とコメント。「審査員全員に、このように貴重な機会を与えてくれた東京フィルメックスの林 加奈子ディレクター、市山尚三プログラム・ディレクターに心からお礼を申し上げます」と感謝が伝えられた。

最後に、林ディレクターが登壇。「皆さま、〝映画の力を信じる映画祭〟東京フィルメックスの日々で、作り手の挑戦を存分に受け止めていただけましたでしょうか?」と問いかけると、観客は大きな拍手で応えた。「映画に感謝し、映画を愛する皆さまにも感謝しながら、来年の東京フィルメックスに向けて準備を積み重ねてまいります」と決意が語られ、第16回東京フィルメックスの授賞式が閉幕した。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください