第29回東京国際映画祭 アジア三面鏡2016: リフレクションズ/ワールド・プレミア

 ひとつのテーマのもと,3人の監督がオムニバス映画を共同製作するプロジェクト「アジア三面鏡」。その第一弾は,「アジアで共に生きる(Living Together in Asia)」をテーマに,ブリランテ・メンドーサ,行定勲,ソト・クォーリーカーの3監督が、日本とフィリピン,マレーシア,カンボジアを舞台に製作しました。

 オムニバス一本目はブリランテ・メンドーサ監督の “SHINIUMA Dead Horse”。

 帯広のばんえい競馬。そのレースを取った外国人。彼は近くの牧場で働いているらしい。脚を引きずっているが,馬から落ちて怪我をしたのだとわかる。彼の名はマーシャル。フィリピン人の不法滞在者であるらしい。牧場は無関係を主張し,彼は強制送還となる。真冬の帯広。ばんえい競馬や付近の牧場。雪が白く美しい。
 フィリピンに着いたマーシャルはバス,ジープニー,バイクタクシーを乗り継いで故郷の村へ。ところが,故郷の家は数年前の台風での土石流被害で壊滅的な被害に遭っていた。家族も残っていない。唯一弟家族がいるが,とてもマーシャルのことを構うような状況ではない。弟が聞く。「一緒に行った女は?」「男を作って逃げられた。今はマニラで家庭を持っているよ。」「兄さんは女ったらしだから。兄貴の子どもたちは激怒して会ってもくれないだろうよ。」
 結局,友人を頼って競馬場の厩舎へ潜り込み,そこで見たものは…。

 雪の帯広からフィリピンの故郷への旅が一気に語られる。それを見ているだけで楽しい。そして,ラストの衝撃。
老いさらばえて脚など折るとは!

 オムニバス二本目は,行定勲監督の「鳩 Pigeon」。

 マレーシア。田中道太郎は認知症。息子のこともわからなくなっているようだ。息子は日本で会社経営を行っているため,月に一度くらいしかマレーシアに来られず,後はマレーシア人のヘルパー任せにしている。ある日,日本語ができるヤスミンという女性が雇われ,道太郎の世話をすることになる。
 道太郎は孤独だが,屋上で鳩を飼っている。鳩は放してもちゃんと厩舎へ戻ってくるように躾けられているようだ。道太郎も老い先短いと知っていたのか,ある日海に出かけ,「こんな美しい海で死んでしまったのか」と戦死した兄たちのことを考えながら,鳩を放すのだった。

 太平洋戦争とマレーシア。そして戦争を知る老人。あまりにありきたりな話ではないだろうか。行定監督というよりは主演の津川雅彦の企画なのではないかと思わせられもする。

 三本目は,ソト・クォーリーカー監督の “Beyond The Bridge”。

 カンボジア,プノンペン。ポルポト軍事政権下で破壊されてしまっていた橋が完成した。この橋は日本企業の支援で作られ,その社長・福田はある感慨にふけっていた。
 彼がまだ若者だった頃,カンボジアへ橋を作りにやって来た福田は現地の美しい女性ミリアと恋に落ちた。結婚しようと約束をしたものの,戦火が間近に迫り,父親に無理やり帰国させられてしまったのだ。
 今完成した橋の上で,福田はあの頃のことを思う。そして,今秘書に付いている彼女のことを。

 何たる大ロマンを作り上げてしまう女性監督だろう!まさに大時代な設定。それを真っ向から,しかも,短編としてきちんと作り上げてしまった手腕には恐れ入らざるを得ない。是非,大メロドラマを長編として撮っていただきたと思う。
 今でも,「骨まで愛して」のメロディーが耳元から離れない。

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