日別アーカイブ: 2014年11月25日

彼女のそばで Next to Her

第15回東京フィルメックス コンペティション参加作品。

 テルアビブの北にある街ハイファの裕福とはとてもいえない地域のアパートにシェリは妹のギャビーと二人で暮らしている。ギャビーは障碍者であり,知能が遅れている。だからシェリは毎日の多くの時間を妹の世話に費やしている。しかし,シェリも働かなければならない。その間,ギャビーをアパートに閉じ込めておくような生活には生活指導員から勧告が入り,シェリが働く昼間の時間はデイケアサービスの施設に預けることになった。そのせいもあってか,シェリは勤めている学校の代用教員であるゾハールと付き合い始め,彼女の家で同棲を始める。当然ながら,ギャビーもデイケアサービス以外の時間は一緒に過ごすことになるのだが,ゾハールのギャビーへの優しい対応もあって,三人の生活は上手くいくように見えた。ところが…。

 素晴らしい!
 シェリとギャビーの二人の姉妹を中心として,その周囲の人たちも含めた実に細やかな演出が観る者を引き付けて離さない。障碍者のギャビーを演じているのはイスラエルを代表する名優モーシェ・イヴギの娘であり,今では自身も人気女優となっているダナ・イヴギ。彼女の演技はとても健常者が障碍者を演じているとは思えない迫力あるものとなっている。そして,妹を見守るシェリを演じるのは監督の奥さんであり,脚本も担当したリロン・ベン・シュルシュ。妹を見守ると同時に,逆に彼女に大きく依存して生きている姉を繊細な演技で見事に演じ切っている。二人の姉妹の演技を見るだけでため息が出る。
 監督は本作が長篇デビューとなるアサフ・コルマン。彼はずっと編集畑を歩んでいたようだが,デビュー作とはとても思えない素晴らしい演出・構成には驚かされる。ラスト近く,大きな事件が起きるのだが,その事件によって,ラストで姉の妹に対する見方が大きく変化する。圧倒される結末に大きな感動が観る者を捉えるのだ。
 本作は母性の物語であると監督は言う。そして,次回作は父性の話になる予定だそうだ。当然,奥さんは俳優としてキャンスティングされるらしい。今後のコルマン監督には大いに期待したい。

シャドウデイズ 鬼日子

第15回東京フィルメックス コンペティション参加作品。

 赵大勇監督の長篇第二作。
 レンメイは中国で最も高地にある村の出身である。彼は都会に住んでいたが,彼女が妊娠したため,子供をこの村で生んでもらおうと帰って来た。彼の叔父さんは町長をしていて,彼を喜んで受け入れてくれた。しかし,彼がやって来てすぐに警察が姿を見せた。どうやら,レンメイは都会で殺人に関わっていて,参考人として彼のことを追って来たようだが,叔父さんは知ってか知らずか,警察には彼のことを話さなかったようだ。
 レンメイはすることもないので,叔父の勧めで計画出産を管理する部署の手伝いをし始める。どうやらその部署にはノルマがあるらしく,子供がいる家庭の女が更に出産するのを知ると,無理にでも堕胎させてしまうような部署なのだった。そして,…。

 レンメイと彼女は結婚していない。彼の叔父は村への滞在を快く許しているようで,結婚せずに子供を作るということにはどうもいい顔をしていないようだ。やはり,中国の奥地の村はかなり封建的なのだろう。そして,このことが後の悲劇に直接つながってくる。
 中国では産児制限が行われている。だから,村では計画出産を管理しなければならない。その最高責任者は町長ということになるのだろう。だからこそ,無理に堕胎させるようなことがあると,町長は鬼だと言われ,村民からも排斥されてしまうのだ。しかも,本作では,直接に堕胎させられた水子の映像まで出すような演出が施されている。おそらくその祟りなのだろう,町長は足に怪我を追ってしまう。確かに中国映画ではあまり見ない演出だと思う。
 無理な堕胎は母体への影響も大きい。そして,それは直接的な悲劇へと結び付く。静かで素晴らしい環境の村で起きてしまう悲劇。現代中国の一面を垣間みる事ができる。