日別アーカイブ: 2015年11月9日

父のタラップ車 (Merdiven Baba) 第28回東京国際映画祭 アジアの未来

ファズルは空港で清掃員をしている冴えない中年男だ。家では家族に馬鹿にされ,妻にはとうとう出て行かれてしまった。何かしなければと,今までは贅沢だと考えていた車を買うことにした。会社から中古を買えば,安く手に入るらしい。しかし,買った車が空港で使われるタラップ車。アメリカ製だが,相当古い。LNG ではなく,ガソリンで走る車だ。とすれば,維持費もバカにならない。しかもタラップが着いたまま!それを知った家族にはまた馬鹿にされた。
ところが,それが吉と出たのだ。町内で火事が起き,タラップがはしごの役を果たして人命救助をしたのだ。ニュースにも出た!バカにしていた近所の人たちも彼に一目置くようになった。しかも,それがきっかけとなり,タラップ車を借りに来る人が続出。ついにはCM出演するまでになった!家族もようやく怒りをおさめてくれるのだった。

ダメ男がある日突然注目の的となる。今までも随分と使い古されたストーリーではある。もちろん,タラップ車を登場させるというのはおそらく初めてではあろうけれども。コメディ仕立てのトルコ映画。なかなか観る機会のないトルコ映画を観られるのは映画祭の一つの楽しみでもある。映画を観ることによってその国の生活が見えてくる。確かに,遠い国にも同じ笑いを共有するような人が住んでいることがわかる。でも,日常生活は全然違うのだが。そんなことを観ることも映画の大きな楽しみであろう。

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告別 (告別) 第28回東京国際映画祭 アジアの未来

シャンシャンはイギリス留学から帰って来た。もうロンドンには戻ることはないだろう。父親は映画関係の仕事をしていたが,今は肺癌で療養中。何年もは生きられないようだ。
シャンシャンと父親との間は疎遠だったし,一緒の時間を過ごしたいと思ったりもするのだが,なかなか上手く行かない。それでも,父親との思い出がないわけではない。淡々と父親の死までの情景が描かれていく。

自伝的作品だと言う。とすれば,監督の父親も蒙古で映画を撮っていたのであろう。
父親が故郷を訪ねる。おそらくは映画を撮っていた撮影所を訪問する。映画看板などが並ぶ中を奥へ行くと何とフィルム上映施設がある。何かを上映してみましょうか?と,古い彼の映画をかけてみる。広大な大地を馬が駆けていく。その馬に乗りこなす彼の若き姿がある。映画とはこういうものだったのだし,映画とはかくあってほしいとの思いが噴出する瞬間だ。こういうところに映画への愛がひしひしと感じられる。

The Kids (小孩) 第28回東京国際映画祭 アジアの未来

ジアジアが好きだったバオリーは,ある日屋上でいじめられている彼女を助けて親しく付き合うようになった。突然場面は現在へ移動する。二人には既に子供がいる。バオリーは定食屋で働き,ジアジアはカフェで働いている。ただ,ジアジアはカフェの店長とできているらしい。もちろん,「いい人」であるバオリーはそんなことは露とも知らない。
二人はバオリーの母親と一緒に住んでいる。二人が働きに出ている間,幼い子供の面倒はその母親が見ているのだが,彼女はギャンブル好きで,賭け麻雀に子供を連れて行ったりしている。
一間のアパートでは手狭だし,そろそろ引っ越しを考えていたが,頭金をバオリーの母親が賭け麻雀で使い込んでしまった。せっかく二人で働いて貯めた金なのに。

貧困から抜けだそうにも抜け出せない生活。幸せならばそれでもいいが,ジアジアがカフェ店長とできていることからもわかるように,未来が見えない生活には飽き飽きしているようでもある。そこへバオリーの母親の使い込みである。どうにもならなくなってしまった若者の行く末は自ずと見えている。
バオリーはいい人過ぎるのだ。映画では子供の誕生は全く描かれていないが,実はこの子供はバオリーの子供ではないのかもしれないとさえ思う(私はずっとそう思って映画を観ていた)。厳しい映画ではある。でも,台湾の今がそこには描かれている。

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